日本野生動物医学会は、今後いかなる生物種をも絶滅させないために、早急に野生生物保護管理の科学的な方法を確立し、実際的なアクションプランを示し、これからの獣医学も野生動物個体あるいは個体群保護、さらには生物の多様性保護のために学問的貢献をおこなうべきであると考え、野生動物または動物園動物の動物医学に関する学術発展を推進するために設立されました。
設立の趣旨
本来、自然生態系をつくっているものは多種多様な生物種のはずです。しかし、その中で人間は極端に頭脳を発達させた哺乳動物として、今や地球上どこにでも生息し他の動物の脅威となっています。人類の繁栄と引き替えに多くの生物種が失われたことは否定できない事実です。地球の運命は人間の選択に委ねられているといっても決して過言ではないでしょう。
日本でも野生生物の数が激減し、すでに絶滅した種あるいは絶滅しつつある種も多く存在します。マスメディアにもよく取り上げられるニホンオオカミ、ニホンカワウソ、ニホンコウノトリ、トキなどは、それら生物のほんの一部に過ぎません。今後いかなる生物種をも絶滅させないことが、現代の人間に課せられた責務といえます。そのためには、早急にわが国で野生生物保護管理の科学的な方法を確立し、実際的なアクションプランを示さなければなりません。そして、これからの獣医学も野生動物個体あるいは個体群保護、さらには生物の多様性保護のために学問的貢献をおこなうべきであると考えます。
具体的には、野生個体群動態のモニタリング技術の確立、傷病野生動物の治療と野生復帰の技術確立、野生動物にみられる致死性の伝染病の予防や発生時の対処、Zoonosis(人獣共通感染症)の感染環とそのメカニズムの解明、あるいは希少動物の飼育下繁殖などが例としてあげられます。また、野生生物を指標とした環境汚染のモニターや、動物と共生できる環境づくりのための研究活動なども、獣医学分野に求められる緊急課題です。
動物園や水族館においては、野生動物を対象とした臨床技術の発展または飼育下でしか行い得ない研究の推進のための場であるだけでなく、野生動物のもつ魅力や価値を一般市民に正しく知ってもらうなどの啓発活動も重要です。
国際的には、IUCN(国際自然保護連合)の獣医専門家グループやCBSG(保護繁殖専門家集団)のように、絶滅危惧種の保護・増殖活動や生態系の保護に対する獣医学の参画が活発におこなわれています。このような世界的趨勢を考えると、これまで等閑視されてきたわが国におけるこの分野の学問体系を発展させ、国際的な要求に対応し得る体制を整える必要があります。
以上のような趣旨を踏まえ、野生動物または動物園動物の動物医学に関する学術発展を推進するために本学会の設立を企画した次第です。
包含する学問領域
本学会が対象とする学問領域は、飼育下の種も含めた野生動物に関する動物医学です。すなわち、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などの野生動物について、基礎(生態も含む)、病態、予防および臨床に関する動物医学の学術交流をおこなう場とします。
応用的な学問領域として、生物の多様性を目指した野生動物保護管理と生態系保全も本学会の重要課題です。また、人間活動が野生動物に及ぼす影響は甚大であり、逆に野生動物から受ける人間の恩恵もまた絶大なものです。そのような意味において、野生動物と人間との関係についても学問領域を広げる必要があります。
そのためにも野生動物に関係のある他の学術団体、例えば、日本哺乳類学会、「野生生物と社会」学会、日本獣医学会、日本獣医師会、ヒトと動物の関係学会などとも連携を保っていく必要があります。
活動案内
【活動の骨子】
- 1.野生動物および動物園動物に関する動物医学研究の学術交流と発展
- 2.野生動物医学の卒前・卒後教育
- 3.傷病野生動物診療に関わる臨床および救護技術の交流と発展
- 4.野生動物の正しい知識と理解のための一般市民への普及啓発
- 5.野生動物医学および野生動物保護に関する国際交流と推進
役員構成
役職 |
氏名 |
所属 |
担当 |
会長 |
高見 一利 |
豊橋総合動植物公園 |
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副会長 |
柳川 洋二郎 |
北海道大学 |
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田島 木綿子 |
国立科学博物館 |
卒前卒後教育 |
顧問 |
大沼 学 |
国立研究開発法人国立環境研究所 |
アドバイザー |
岸本 真弓 |
(株)野生動物保護管理事務所関西分室 |
アドバイザー、専門医協会・法人化 |
遠藤 秀紀 |
東京大学 |
アドバイザー、領域拡大(動物園水族館対応) |
事務局長 |
石塚 真由美 |
北海道大学 |
庶務・経理 |
理事 |
淺野 玄 |
岐阜大学 |
会員支援・保護基金委員会 |
藤原 摩耶子 |
京都大学野生動物研究センター |
広報委員会 |
川瀬 啓祐 |
日立市かみね動物園 |
学術・教育委員会 |
加藤 卓也 |
日本獣医生命科学大学 |
学会誌編集委員会 |
佐藤 雪太 |
岩手大学 |
ニュースレター編集委員会 |
松本 令以 |
コウノトリの郷公園 |
感染症対策委員会 |
岩尾 一 |
新潟市水族館 |
臨床委員会(動物園水族館対応) |
渡辺 有希子 |
猛禽類医学研究所 |
野生動物保全・福祉委員会 |
木下 こづえ |
京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科 |
国際交流委員会 |
楠田 哲士 |
岐阜大学 |
学生部会 |
幹事 |
中山 翔太 |
北海道大学 |
庶務・経理 |
長嶺 隆 |
NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 |
会員支援・保護基金委員会 |
白形 知佳 |
新江ノ島水族館・東京農工大学 |
広報委員会 |
松山 亮太 |
酪農学園大学 |
学術・教育委員会 |
チェンバーズ ジェームズ |
東京大学 |
学会誌編集委員会 |
井上 春奈 |
わんぱーくこうちアニマルランド |
ニュースレター編集委員会 |
佐伯 潤 |
くずのは動物病院・帝京科学大学 |
感染症対策委員会 |
進藤 英朗 |
下関市立しものせき水族館 海響館 |
臨床委員会(動物園水族館対応) |
吉本 悠人 |
東京動物園協会 |
野生動物保全・福祉委員会 |
鳥居 佳子 |
札幌市円山動物園 |
国際交流委員会 |
監事 |
佐々木 基樹 |
帯広畜産大学 |
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齊藤 慶輔 |
猛禽類医学研究所 |
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評議員 |
安齋 政幸 |
近畿大学 先端技術総合研究所 |
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石井 千尋 |
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石名坂 豪 |
野生動物被害対策クリニック北海道 |
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伊藤 圭子 |
奄美いんまや動物病院 |
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伊東 隆臣 |
海遊館 |
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伊藤 英之 |
京都市動物園 |
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植田 美弥 |
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宇根 有美 |
一般社団法人どうぶつ疾病研究支援協会The Animal Disease Research and Support Association:ADRSA「アドルサ」 |
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太田(チェンバーズ) 香織 |
公益財団法人東京動物園協会 多摩動物公園 |
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奥田 ゆう |
岡山理科大学 |
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小澤 真 |
鹿児島大学 |
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片平 浩孝 |
麻布大学 生命環境科学部 |
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木戸 伸英 |
横浜市立金沢動物園 |
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日下部 健 |
山口大学共同獣医学部 獣医解剖学教室 |
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鯉江 洋 |
日本大学 生物資源科学部 獣医生理学研究室 |
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近藤 圭佑 |
(株)海の中道海洋生態科学館 |
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坂本 英房 |
京都市動物園 |
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迫田 義博 |
北海道大学大学院獣医学研究院 微生物学教室 |
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嶌本 樹 |
日本獣医生命科学大学 |
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下鶴 倫人 |
北海道大学大学院 獣医学研究院 野生動物学教室 |
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進藤 順治 |
北里大学 獣医学部 野生動物学研究室 |
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鈴木 正嗣 |
岐阜大学 応用生物学部 |
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須藤 明子 |
(株)イーグレット・オフィス |
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外平 友佳理 |
SALU |
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竹鼻 一也 |
千葉県南部家畜保健衛生所 |
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坪田 敏男 |
北海道大学大学院獣医学研究院 環境獣医科学講座 野生動物学教室 |
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常盤 俊大 |
日本獣医生命科学大学 |
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鳥居 佳子 |
札幌市円山動物園 |
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野田 亜矢子 |
広島市安佐動物公園 |
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羽山 伸一 |
日本獣医生命科学大学 |
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坂東 元 |
旭川市旭山動物園 |
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松林 誠 |
大阪公立大学 獣医免疫学研究室 |
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箕輪 多津男 |
(NPO)野生動物救護獣医師協会 |
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森光 由樹 |
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 森林・動物系 地域環境マネジメント研究部門 |
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保田 昌宏 |
宮崎大学 農学部 獣医学科 獣医解剖学 |
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山口 剛士 |
鳥取大学 農学部 |
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山本 ゆき |
東京農工大学 農学研究院 動物生命科学部門獣医生理学研究室 |
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横畑 泰志 |
富山大学 理学部 生物圏環境科学科野生動物保全学研究室 |
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吉村 久志 |
日本獣医生命科学大学 |
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和田 新平 |
日本獣医生命科学大学 獣医学部獣医学科水族医学研究室 |
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綿貫 宏史朗 |
京都大学野生動物研究センター/公益財団法人日本モンキーセンター |
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