活動方針
昨今、野生動物を取り巻く環境は複雑さと厳しさを増しています。生息環境の変化などによる生物多様性の減少、高病原性鳥インフルエンザや豚熱といった重篤な感染症の多発、シカの急増のような生態系バランスの崩壊、クマなどで顕著となっている人との関係性の変化など、さまざまな問題が生じています。また、動物倫理について、生物資源の持続可能かつ公平公正な利用についてなど、人間社会の中で熟考し整理すべき課題も少なくありません。さらに、野生動物に対する社会的な意識も高まっています。こうした状況の中で、野生動物学・野生動物医学の重要性は増しており、これらの分野が果たす役割は拡大しています。
日本野生動物医学会は、これらの分野において高い専門性を持つ方々や深い関心を抱く方々が集い、向上し、人を含むすべての生き物にとって望ましい未来を築くための場です。多くの方々にご参集いただき、さまざまな考えや発見、知識や技術を持ち寄り、共有し、議論することで、参加された方々、さらには社会全体に対する成果を生み出していかなければなりません。
1995年に設立された日本野生動物医学会は、2025年に30周年を迎えました。この節目を機に、主要な中期的活動方針を以下のとおり示します。
・専門性の向上 (学術・教育委員会、学会誌編集委員会、感染症対策委員会、臨床委員会)
学術団体として研究や技術開発などの活動を推進させ、科学や技術の発展に寄与します。
・普及啓発の推進 (広報委員会、ニュースレター編集委員会、野生動物保全・福祉委員会)
日本における特定分野の専門組織として、組織内外に対して正しい情報の普及に努め、多様な生き物の未来に貢献します。
・ネットワークの構築 (事務局、国際交流委員会)
さまざまな人や組織がつながり、人材や情報が行き交う場となります。
・会員支援の充実 (会員支援・保護基金委員会、学生部会)
個々の学会員の皆様の取り組みが、学会全体の活動の源です。皆様がさらに取り組みを推進できるよう、適切な事業を展開します。
(括弧内は主に担当する委員会)
2025年4月1日
日本野生動物医学会 会長 高見 一利